PRP
PRP ( Platelet-rich plasma )
■多血小板血漿(PRP)による治療とは
指や手を切ってしまったとき、傷がふさがりカサブタが出来て、やがて元通りに治ったご経験があると思います。実は、この一連の治癒過程には、血液の中に含まれる”血小板”が重要な役割を果たしております。そのため、血小板が少ない方では血が止まりにくく傷の治りも遅くなります。また、打撲は捻挫をしたときには、怪我した部分が腫れることがあると思いますが、この腫れは皮膚の下で出血したことによるものです。打撲や捻挫でも、皮膚を切ったときと同じように、血小板から痛んだ組織の修復を促進する物質(成長因子)が供給され、傷んだ組織を元通りに治そうとする自己治癒機転が働いています。PRP療法は、この”自分で自分を治す力(自己治癒力)”をサポートし、改善に導く治療法として、ヨーロッパやアメリカでは頻繁に行われています。具体的な治療法方法は、自分の血液を取り、遠心分離処理をします。成分に応じて分離した血液の中で、血小板を多く含む血漿部分層を多血小板血漿(PRP)として採取します。このPRP中には、成長因子が豊富に含まれますので、これを自分の身体の傷んだ部分に注射すると、その部分の組織の修復が促進され、”早期治癒”や”疼痛の軽減”効果をもたらします。
■多血小板血漿(PRP)治療が効果的な疾患
ひざの変形
例えば、"ひざの変形"で悩んでいる方は、PRP療法の適応です。変形性関節症では、変形の進行に伴い、軟骨がすり減ったり、半月板が傷んだり、炎症が起きてひざに水がたまったりします。PRPは、こうした組織の修復を促したり、関節の炎症を抑制したりする効果が期待できます。しかし、血小板自体は軟骨や半月板にはならない細胞のため、完全に軟骨が無くなってしまった部分にPRPが軟骨を作ることは不可能です。完全に軟骨が削れてしまった方では、骨どうしがぶつかり合い軟骨だけでなく骨も削れてしまいO脚が進行しますが、PRPはそれを抑制することは可能と考えられています
順天堂医院では、これまでに1,000例以上の変形性関節症の方にPRP療法を行っていますが、効果がある方は全体の約60%です。ご自分の血液を使うため、血小板の活性が高い/低いなどの因子が効果に影響を及ぼすのではないかと考えられていますが、まだ明らかにはなっていません。また、膝の変形が重症な方(関節の隙間が無くなっている方)や、肥満の方ではPRP療法の効果が低下します。しかし、非常に副作用の少ない治療ですので、数ある保存加療のうちの一つの選択肢として、特に既存の治療法への反応が乏しい方への実施をお勧めしています。
スポーツ外傷・障害
次に多くのPRP療法を行っているのは、スポーツ外傷・障害に対してです。スポーツをする方は”少しでも早い復帰”を臨みます。そうした要望に応えるため、当院では靱帯損傷・肉離れ・腱炎などに対してPRP療法を行っております。また、これまでいろいろな治療を試してきたが、中々良くならない”難治性”の外傷・障害の治療としてPRP療法を希望なさって来院する方も多く見られます。このような方は、治るはずの組織が治りにくい環境になってしまっているため、そこにPRPを注射することで、本来あった自己治癒機転をもう一度活性化し、怪我を治す環境を再獲得することを期待しております。これまでに、プロスポーツ選手から学生スポーツ、中高年のスポーツ愛好家まで、幅広い対象の方にこの治療法を行っております。他院で手術加療を勧められたが決心がつかず、最後の保存療法としてPRP療法を希望して来院され、PRP療法が奏功して手術を回避できた方も複数おられます。先述のように、非常に副作用の少ない治療ですので、数ある保存加療のうちの一つの選択肢として、特に既存の治療法への反応が乏しい方への実施をお勧めいたしております。